2011年02月21日
生きてりゃいいさ

今日のランチです。
ここのところ忙しく かみさんも弁当作りまで 気が回らない。
弁当箱にご飯を入れて チンして
レトルト牛丼をぱっとのせた お手軽ランチ。
一つだけ贅沢なのは のっかった卵は 有精卵
たまごふわふわに使う有精卵を ちょっと拝借
現代の食卓では卵を 生き物だと意識することが無くなってしまった。
ところが有精卵では 日にちが経過すると 生命そのものである事を思い知る。
小さな赤い心臓が出てきたり 栄養を自ら循環させる機能が生まれたり
小さな殻の中に 生命が着々と 日々成長していく。
ふと 子供たちが産まれた頃を 思い出す。
貧乏で 共稼ぎの僕たちは東京府中の小さなアパートに暮らしていた。
かみさんはしっかり者だったが 当時の僕と言えば
やっと定職についたものの 厚生年金もつかない安月給の会社で働き
貯金もなく 結婚後もしばらくは 子供もつくれないありさまだった。
よく そんなだらしない僕に かみさんは着いて来てくれてものだ。
彼女のご両親も 不安がいっぱいだったはずだが
多分今の僕なら 娘がそんな男を連れてきたら 門前払いするに違いないが
ただそういう僕たちを 彼らは優しく見守ってくれていた。
ありがたい!!
追い返されていたら 今の僕はない。
そう 今は亡き義父が 最初に僕にそっと しかしきっぱり
彼女のいない場で言った事を忘れない。
「私の大切な大切な娘を君に預ける、だからその覚悟でいなさい。」と
子供が出来て しかも二人の娘で そこで初めて
義父の気持ちが 痛いほどわかるようになった。
母親に比べれば 父親など たわいのない存在だが
親になって初めて解ることがある。
理屈では知っているつもりでも
実際 熱を出してうなされる幼子を看病し
ものの言えない赤ちゃんは 大声でアパート中に響くような声で泣いて訴えるだけ
仕事で疲れて帰ろうが 夫婦げんかでもめていようが
そんなことは お構いなしに 夜の夜中に 泣き叫ぶ。
どうなってしまうのか心配で心配で 睡眠不足になろうが
親というのは そういう存在なのだ。
特に母親は 当たり前のように献身的だ。
そんなこんなを繰り返して 子供は成長する事を 身をもって知ることができる。
今では 憎まれごとしか言えない年頃になってしまったが
そうして育ってきた娘たちを 愛おしいと思うのは 自然なことだろう。
僕もそろそろ 義父と同じ心境になる時期に近づいた。
かみさんの人生は 彼女だけのものではない。
必死に育て上げた御両親の人生をも 含有している。
共稼ぎの僕たちの子育ては 近所の保育園に6ヶ月目から預けることで成り立っていた。
たった6ヶ月の赤ちゃんを保育園に預ける。
そうしなければ 僕たちは食べていけなかった。
八王子から毎朝 義父は訪ねてくれて
雨の日も風の日も保育園を往復してくれた。
義父にとっても かけがえのない生命だった。
娘はそういう愛に包まれて 成長できた。
数年後 僕たちは東京を離れ 名古屋、静岡と移り住んで袋井に戻って来た。
義父はその内 兵隊時代の無理がたたって病魔におかされ
しばらくの入院の後 あの世に旅立たれた。
異郷で暮らす僕たちは 頻繁に見舞う事も出来ず
かみさんには辛い境遇を強いることとなった。
やっと休みを作って見舞いに出かけた時
義父は もうこれが今生の別れと悟っていたのだろう
体力も落ちて 寝ているのも苦しそうだったが
ベットの上に 正座し身繕いを正し
「晃治君お世話になったね、娘たちをよろしく頼みます。」と
深々と頭を下げて 挨拶をなさった。
まだ 生きる気力もあった時に 最後の別れを口にする義父の姿を
思い出すたび 胸が詰まる。
僕たちが帰って 数日後 彼は亡くなったが
最初と最後の言葉に 僕はどれだけ真摯に向き合えてきただろうか。
多分 義父はあちらから僕の様子を見ながら 舌打ちをしているに違いない。
が、やはりあの言葉の深さを思うと その度に身が引き締まる。
彼の大切な 娘や孫たちを しっかり見守るのが 僕の役割だが
振り返ると 情けない自分ばかりが思い浮かぶ。
仕事に明け暮れて娘たちの しつけを怠った気がする。
彼女たちの大切な場面に 僕は不在だった気後れもある。
何故だか 何故だか 河島英五の「生きてりゃいいさ」の歌詞が浮かんでくる。
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恋を失くした一人ぼっちのきみを
そっと見つめる人がいるよ
きみにありがとう とてもありがとう
もう会えないあの人にありがとう
まだ見ぬ人にありがとう
今日まで僕を支えた情熱にありがとう
生きてりゃいいさ 生きてりゃいいさ
そうさ生きてりゃいいのさ
喜びも悲しみも 立ち止まりはしない
巡り巡って行くのさ・・・
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卵も 命の塊りなのだ
大切に育めば 素敵な命が誕生する
生きていれば 良い事ばかりじゃない
つらい事も 悔しい事も情けない事もたくさんある
でも生きなくっちゃ 喜びにも巡り合えない
またきっと 良い事に巡り合えるよ
義父を思い出し 命の重みを再確認する。
Posted by げんきくん at 23:13│Comments(0)
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