尾岱沼の嵐 2

げんきくん

2010年06月27日 17:28

知床半島から南下って
 釣り針のような形の 野付半島に辿り着く。

 酪農で有名な 別海町の一部になるわけだが
 尾岱沼(おだいとう)は湾の近辺の地名で
 野付湾の打瀬船は 恰好の写真のモチーフにもなっていて
 誰もが どこかで観光写真として見た事があるはずだ。

 トドマツが立ち枯れた トドワラも有名で
 砂州に迷い込んで 風景に溶け込むと
 本州では見かけない 鳥たちの滑空に出くわすこともある。

 観光シーズン中は賑やかなこともあるのだろうが
 普段は もっぱらのどかで 実に気持ちが落ち着く。
 
キャンプ場にお世話になって 気ままな時間に出掛けて
 野付の自然を楽しむ。

 管理人の大村さんの車に乗って
 孫たちと一緒に 街に買い物に行く事もあった。

 けっこうお年を召していたが
 暴れん坊将軍並みの運転で 北の男を感じさせられた。

 カーブの手前でしっかりスピード落として 抜ける前から一気にアクセル踏み込めと
 まだ自動二輪の免許しかなかった僕に 安全で派手な運転方を伝授した。


台風に見舞われたのが バイトの前だったか後だったか 
 よくよく考えてみたが はっきりしないことに気が着いた。

 30年も前の事だ 忘却の彼方 どっちだって 天地はひっくり返らない。
 とにかく北海道で2度目の台風遭遇は ある意味で鮮烈に覚えている。

それは ここの管理人大村さんと言う人間の深さを知れたから。

台風が接近しているという情報に 
 やれやれ参ったなあ でも酷くなれば管理棟に避難させてもらえるかも と
 勝手に 安易な逃げ道を頭に巡らしてしまった。

 ところが 風雨が酷くなり始めた夕方現れて 大村さんは頑張れるだけ頑張れと勇気づけ 
 水浸しになるといけないから 管理棟にマットレスを取りに来るように告げて去った。

 あれれれと 半分当てが外れた気がしたが いつまで経っても甘い考えの抜けない自分をすぐ反省した。
 予報通り 夜半から益々風雨は強くなり テントごと吹き飛ばされそうな勢い。

 貸してくれたマットレスが凄く役立った。 
 まず重くて大きいから吹き飛ばされない
 次に 厚いから 濁流となった雨道から 荷物や本人を守ってくれた。

 そしてその台風の中を 一睡もせず大村さんは見守ってくれ
 「大丈夫か?」「大丈夫か?」と 時間を置いて朝方までテントの外に訪ねてくれた。

 安易に安全な管理等に招き入れるのは簡単だ。
 でもあの凄まじい風雨を体験させてくれ 苦労を厭わず見守り続けてくれた大村さんに
 僕は深く深く 感謝したい。

 先日 三ケ日青年の家で 訓練ボートが転覆して死者が出た。
 大変気の毒に思うが
 そのことがきっかけとなって 安全安全と臆病になって
 管理者が本来しなければいけない訓練や心構えを 棚に上げ
 安易に無難に走る風潮は ますます教育の世界を空洞化させまいか?
 

教育者や管理者は 命がけで未熟な者たちを育て守る覚悟が必須だ。
 強靭な精神を育てるなど 今の世では 死語になってしまったかもしれないが
 モンスターペアレントと呼ばれる バカ親たちの脅しに屈せず
 日本の将来のために 凛とした姿勢で立ち向かってほしい。

 その子たちが 次の世代を立派に育て
 老いた我々を守らなければいけないのだから。
 
台風一過 大村さんは僕を管理棟にではなく 
 大村さんの自宅に招いてくれ
 ゆったり風呂を使わせてくれた。

 娘さん夫婦とお孫さんたちと 昨夜の暴風雨を笑って話し
 久しぶりの甘味もご馳走になった。

 北の青空が一気に晴れ上がった。

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